Study 2050

2050年問題。これから先の未来、避けては通れぬ困難が私たちを待ち受ける。さて、今を楽しんでいる暇があるの?

3年前に書いた物語

Dも。

ここ2日間で、立て続けに別々の友達から、3年前にFacebookであげてた小説(?)が賞賛(?)された。

今日は息抜きに、そのクソ小説を披露しておく事にします。

 

 

日本は財布を落としたとしても返ってくる素晴らしい国である、ということは誰もが知っていることであろう。まさに今日、それを実感することになろうとは。

夕方の5時くらいであろうか、Fはスマホのバイブ音で、目を覚ました。どうやら学校の図書館で勉強している内、ついつい眠ってしまっていたらしい。ブルリブルリと耳元でふるえる彼のAQUOS phone。 いや、ブルブルだったかな?ブープーだったかも。 静かな図書館に鳴り響くスマホ。それにちらりと目を遣ると、そこには母の名前が表示されていた。
「はてさて、こんな時間に一体何のようであろうか。なんにせよ、ここで通話するのもまずかろう。」
Fは一度その着信を拒否して、図書館の外へとむかおうとした。しかし、そうしない内に、母から一件のlineがきた。そこには、
『理学部の学務係まで来てだってさ』
とあった。Fはその言葉の意味を理解できなかった。Fは生来とても真面目な男であった。Fの母もまた真面目であったので、これは何かの間違いであろうとFは思った。しかし、なにも返事を返さないのも良くないだろうと考えて、
『なぜそうしなければならないのでしょうか。私が何をしでかしたと言うのですか。母上もお知りの通り、私はゴミをゴミ箱に捨てるような男です。理由をお聞かせください。』
と、返事した。しばらくも経たない内に母からの返事がきた。
『あなた、財布を落としたのではありませんか。先ほど学校から連絡がありました。』
その言葉を理解するのに、そう長くはかからなかったはずであるが、男からしてみれば、その一瞬は1000年のように感じられた。

ひとまず席に戻ってから、自分の尻pocketをまさぐった。たしかにそこにあるはずの財布は無く、彼の尻はただひたすらに彼の手の感触を、彼の手はただひたすらに彼の尻の感触を確かめているにすぎず、彼はあたかも広大な絶望の谷底をさまよう一人の旅人のような顔をしながら、ただただ椅子に座り続けていた。

気がつくと、男は理学部の学務係の手前まで来ていた。恐る恐る職員に尋ねると、あっさりと男の財布は戻ってきた。彼の財布には常に学生証が入っていたので、職員は彼の母の電話番号を突き止めることができたようだ。男は尋ねた。
「すみませんが、これはどこに落ちていたのでしょう。私には見当もつきません。」
職員は言った。
教育学部B棟の男子トイレです。」
「その様なところへは一度も足を踏み入れたことがありません。」
男がそう言ったのとほぼ同時に、まるで大量の蛆が体を這いずり回るかのように、即座に彼の不安な思いが彼の心を蹂躙した。そしてそっとその財布の中身を確認すると、ものの見事にお金だけ、きれいさっぱり無くなっていた。

幸いにも盗まれたのはお金だけであった。Suicaなどのカードの類いや、かつてテプコソニックで手にいれた電気博士証は、財布に収まっていた。日本は財布を落としたとしても返ってくる素晴らしい国である。そしてそれはどこまでも文字通り、財布だけが返ってきたのだ。Fのお金は、何者かに盗まれてしまったのだ。

Fは帰路の途中で考えた。一体これは誰が悪いのかと。はじめは盗人を怨んだ。行く先々にあるコンビニを通りすぎる度、もし金があれば と思った。
「ああ、私の前を歩くあの人は、おいしそうな肉まんを食べているのだな。」
しかし、気づいた。すべては自分の過失であったと。もし自分が財布を落としさえしなければ、盗人が盗人にならずに済んだのである。

「いや、待てよ。本当に原因は私にあろうか。そもそも尻pocketのせいで、落としたことに気づかなかったのではなかろうか。」

Fはそこで自分の過失を認めていればよかったのだが、あろうことかズボンに責任転嫁した。彼は死んだ。それは肉体が朽ち果てるとか、そういう意味での死ではなく、心が腐り、心が死んだのである。生来真面目であった男は、しまいにはズボンにすべての責任をなすりつけたのであった。

これは自分のズボンに心を惑わされた一人のおろかな男の物語である。

 

次回 死から蘇った、復活のF(公開未定)

 

 

 

ちなみに3年経った今、まだ続編は出ていない。